温室効果ガス排出量 が減少し、大気中の濃度が安定しても、これまでに排出された温室効果ガスは数百年滞留し続けながら気候変動を引き起こし、被害を誘発する事が予想されている。よって、気候変動への対応は、温室効果ガス排出減少による気候変動速度の緩和だけでは十分とは言えず、気候変動科学と適応分野の対策が共に整備される必要がある。気象庁では、気候変動科学分野を主管する機関として、気候変動監視業務の効率極大化及び体系化を目指し、2008年3月、気候変動監視センターを本庁の直轄部署とする組織改編を行った。また、将来的な気候変動への備えとして必須となる気候変動監視能力の強化、気候変動対応戦略樹立に必要な科学情報の提供、気候変動に対する科学的知識の増進、予測技術の向上と国民の理解のため、気候変動に関する広報を積極的に行っている。
気象庁は、地球環境の実態を正確に把握し、地球規模の気候変動に対する長期的な予測・対応戦略樹立に必要な科学的基礎情報を継続して提供・支援するため、1996年、安眠島に気候変化監視センター(WMO/GAW Station47132)を新設し、気候変動全般の監視業務を本格化させた。2009年現在、2か所の基本観測所(安眠島気候変化監視センター、浦項気象台)、5か所の補助観測所(江原地方気象庁、蔚珍気象台、鬱陵島気象台、木浦気象台、高山気象台)、3か所の委託観測所(延世大学校2か所、光州科学技術院)を置き、2008年7月には高山気候変化監視所が竣工した。現在、気象庁が提供する気候変動監視データは、温室効果ガス、反応ガス、エアゾール、大気輻射、降水科学等30種類以上にのぼり、これらのデータは各部署の政策資料だけでなく、国内外の基礎研究資料としても幅広く活用されている。
気象庁では、気候変動に対する適応政策と産業活動支援等のため、科学的な気候予測情報を提供しており、これにより地球の生態容量を極大化し、生態効率性を高める役割を果たしている。また、社会、経済、産業、文化等の全分野に渡り、長期的な天候展望に対する需要が増加している事を考慮し、2008年の春からは季節を一つ先取りした気候見込みを提供しており、今後も新たな気候予測モデルの導入により気候予測の精度を向上させ、より信頼度の高い気候展望の提供を目指している。
また、地球規模の気候予測情報を世界各国と共有し、より高い予測技術を開発する事で気候予測における信頼度向上を目指し、WMO長期予報マルチモデルアンサンブルリードセンター(WMO Lead Centre for Long-Range Forecast Multi-Model Ensemble, http://www.wmolc.org)を米国気象庁と共同で設立、運用している。気象庁はWMO長期予報マルチモデルアンサンブルリードセンターとして、世界11か所の長期予測資料作成センター(WMO Global Producing Centre for LRF)で作成される地球規模の気候予測資料に対するWMO標準化方案を開発し、世界規模で優れた気候予測資料を共有する事で、国家間の気候予測技術交流及び向上に寄与しており、特に、気候予測専門技術とインフラが不足している開発途上国からの支持を受けている。合わせて、気象庁が開発したマルチモデルアンサンブル予測技術はWMOから未来の気候予測技術に選定(2008年)され、名実ともに世界気候の予測技術標準として認められている。
気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)は、気候変動問題への対処を目的に、1988年、世界気象機関と国際連合環境計画(UNEP)が共同で設立した機関である。
世界中の科学者が参加して、気候変動の推移及び原因究明、気候変動に伴う生態学的、社会経済的な影響評価及びこれに対する対応戦略を分析した報告書を発表し、政府間交渉の根拠資料として活用されている。韓国はIPCC 副議長国として世界の気候変動政策樹立に重要な役割を果たしており、気象庁は韓国を代表するIPCCの主管部署として活動している。